こんにちは、「転職案内人」です。現役の薬剤師として働きながら、5店舗を管轄する係長をしています。薬剤師歴は12年、自分自身も2年前に転職活動を経験しました(最終的には現職に踏みとどまっています)。

もしあなたが、過誤に気づいた直後にこのページを開いているなら。あるいは、報告したあと家に帰って、天井を見ながら眠れずにいるなら。まずお伝えしたいのは、その動揺の大きさは、あなたが薬剤師として真面目にやってきた証拠だということです。どうでもいいと思っている人は、こんな時間に検索しません。

この記事は「気をつけましょう」という話をするためのものではありません。気をつけていたことくらい、私にも分かります。書きたいのは、報告を受ける側(管理薬剤師や上長、そのさらに上の管理職)が、報告を受けたときに実際に何を考え、何を見ているのかという一点です。

「怒られるのが怖くて言い出せない」「報告したら評価が終わる」と思い詰めている方の頭の中にある“上司像”と、報告を受ける側が実際に頭の中でやっていることには、かなりの開きがあることが多いからです。私は複数店舗を管轄する立場として、現場からの報告を受ける側にいます。その立場から見えている景色を、できるだけ具体的にお話しします。なお、この記事であなたのミスの内容を裁くようなことはしません。そこはもう、あなたが十分すぎるほど自分でやっているはずですから。

もし今、落ち着いて全部を読める状態でないなら、自分がどの段階にいるかだけ確認して、そこから読んでください。全部読む必要はありません。

先に、順番だけ。いま動くべきことは3つです

細かい話は後にします。まだ気持ちが整理できていない段階の方のために、優先順位だけ先に書いておきます。この順番は、勤務先の規定がある場合はそちらが優先ですが、一般的にはこの順序で語られることが多いものです。

  1. 患者さんの安全確認が最優先。すでに服用されている可能性があるか、健康被害が生じている可能性があるか。ここが最初です。
  2. すぐに上長(管理薬剤師・薬局長)に報告する。自分だけで対応方針を決めない。連絡先が分からなければ、その場にいる先輩でも構いません。とにかく一人で抱えない。
  3. その時点で分かっている事実を、記憶が新しいうちにメモに残す。時刻、経緯、気づいたきっかけ。あとで報告書を書くときに、記憶は驚くほど薄れます。

ここで大事なのは、2番を自分の判断で飛ばさないことです。特に「患者さんに直接電話して自分で謝ってしまおう」「自分でリカバリーしてから報告しよう」という発想は、気持ちとしては痛いほど分かるのですが、おすすめできません。患者さんへの連絡・謝罪・回収の方法は、勤務先の規定や、医療機関との連携などが関わってくるため、組織として方針を決めてから動くのが原則とされています。誠実であろうとするほど個人で動きたくなるものですが、そこは組織に預けてしまってください。

そして、もしこれを読んでいる時点で「まだ報告していない」なら。次の章を読んでから、報告してください。あなたが想像しているものとは、たぶん違う景色が向こう側にあります。

報告を受ける側は、実際に何を考えているのか

実体験私は複数の店舗を管轄する立場として、現場からインシデントの報告を受けます。個別の事例そのものをここに書くことはできませんが、報告を受けた瞬間に、管理する側の頭の中で何が起きているかという「順番」は、一般化してお話しできます。

①最初に浮かぶのは、ほぼ確実に「患者さんは大丈夫か」

報告を受けて最初に確認するのはここです。患者さんの状態はどうか。まだ服用前で回収できる段階なのか、すでに服用されているのか。健康被害の可能性があるなら、どういう対応が必要か。処方元への連絡が要るのか。

この段階で、「誰がやったのか」を考えている余裕は正直ありません。思考の優先順位として、目の前の患者さんの安全に全部持っていかれます。報告する側は「怒られる」と身構えているのに、受ける側の第一声が「患者さんは?」「今どういう状態?」という事実確認ばかりになるのは、そういう理由です。

だから、報告するときは「すみません」より先に、「◯◯という過誤が起きました。患者さんは今こういう状態です」から入ってもらえると、受ける側はすぐ動けます。謝罪は、必要ならあとでいくらでもできます。

②次に見るのは「どこで止まらなかったのか」

患者さんの安全の目処が立ったあと、管理する側が見ているのは、「なぜ、そのミスが最後まで誰にも止められずに窓口を通過したのか」です。

調剤過誤は、一つのミスがそのまま事故になることは実は少なく、いくつものチェックポイントをすり抜けた結果として起きるものだ、というのは医療安全の分野で一般的に言われる考え方です。だから受ける側は、「どこにあったはずの網が機能しなかったのか」を追いかけます。

この質問群を浴びると「詰められている」と感じることがあります。でも、これは追及ではなく構造を見に行っている作業です。同じ穴が空いたままなら、次は別の誰かが同じところに落ちる。それを塞ぐために聞いています。

③「誰が悪いか」は、思っているほど関心の中心ではない

一般論断定すると嘘になるので慎重に書きますが、医療安全の考え方の主流は、個人の責任追及ではなく、システムとしての再発防止に置かれているとされています。人は必ずミスをする生き物だという前提に立ち、ミスが起きても事故に至らない仕組みを作る、という発想です。

管理する側の実務から言っても、これは自然なことです。「本人の注意不足でした」で終わらせた報告書は、そのあとが続かないからです。上に説明する材料にも、他店舗へ横展開する材料にもならない。価値があるのは「原因はこういう構造で、だからこう変えます」という整理であって、「誰々が不注意でした」という結論ではありません。

厳しく言えば、管理職は自分の管轄でもう一度同じことが起きるのがいちばん困ります。あなたを責めることより、同じことが起きない状態を作る方に強い関心がある——美しい話ではなく実利的な理由です。人格の良し悪しではなく仕組みの話なので、そのぶん当てにしやすい部分だと思っています。

④いちばん頭を抱えるのは、報告が遅れたときと、隠されたとき

逆に、受ける側として本当に困るのはこちらです。

過誤そのものは、早く分かれば打てる手がたくさんあります。服用前なら回収できるかもしれない。処方元に連絡して指示を仰げるかもしれない。患者さんへの説明も、こちらから先に誠実に行える。ところが、発覚が遅れると、その選択肢が片端から消えていきます。患者さん側から先に指摘が来る形になると、「薬局は把握していなかった」「気づいていたのに黙っていた」という構図になり、患者さんとの信頼関係にとっても、店舗にとっても、本人にとっても、いちばん重い形になりがちです。

管理する側が「隠さないでほしい」と繰り返し言うのは、道徳の話をしているというより、手が打てるうちに教えてほしいという実務上の切実な要望です。報告してくれた人に対して「よく言ってくれた」と本気で思う瞬間が、この仕事には確かにあります。

そして——ここが大事なところなのですが、もしあなたがすでに数日経ってしまっている、あるいは言い出せないまま時間が過ぎているとしても、この章は「もう手遅れだ」と言うために書いたものではありません。いつ報告しても、その時点がいちばん早いタイミングです。1週間前に言えなかったことを今日言うのは、明日言うより確実に良い。受ける側から見ても、遅れて報告してくれた人に対して思うのは「なぜ黙っていた」ではなく、まず「教えてくれて助かった、では今から何ができるか」です。時間が経っているほど、一人で抱えている苦しさも大きいはずです。どうか、今日のうちに声を上げてください。

⑤ただし、「管理職は絶対に怒らない」とまでは言えません

ここは正直に書いておきます。上に書いたのは、医療安全の考え方に沿って動いている管理者・組織であれば、こう考えることが多いという話です。人が運用している以上、差はあります。

感情的に叱責する上司も、報告した人を評価上で不利に扱う職場も、現実には存在すると言われています。それを「そんなことはない」と打ち消すつもりはありません。ただ、それが起きたときの問題は、あなたの過誤ではなく、その組織の医療安全の運用の方にあります。報告した人を叩く組織は、次から報告が上がってこなくなり、結果的にもっと危ない状態になる。それは管理の失敗であって、あなたの落ち度ではありません。上司との関係そのものが苦しい場合は合わない上司との向き合い方も参考にしてみてください。

そして、それでもなお報告は必要です。理不尽な叱責を受ける可能性があるとしても、患者さんの安全という一点においては、報告しない選択肢の方がはるかにリスクが大きいからです。叱責の問題は、報告を止める理由ではなく、報告したあとに、別の問題として考えるべきことです。

インシデント報告書は、本来は罰するための書類ではないとされている

一般論インシデント報告書を書くように言われると、「これが人事記録に残って、ずっと不利になるのでは」と感じる方が少なくありません。制度の運用は勤務先によって違うので断定はできませんが、医療安全におけるインシデント報告の考え方は、懲罰ではなく情報収集・再発防止のためのものだと一般に説明されています。むしろ「報告件数が多い=現場が正直に上げてくれている」と評価する組織もある、という話は業界でよく語られます。報告がゼロの店舗は安全なのではなく、単に上がってきていないだけかもしれない——管理する側は、そういう見方をします。

書くときのコツを、受け取る側の実感としていくつか挙げておきます。

4つ目は特に強調したいところです。「環境のせいにしていると思われたくない」という気持ちで環境要因を書かないでいると、原因が「本人の注意不足」に丸め込まれて終わってしまいます。そうすると対策も「注意する」しか出てこない。それは店舗にとっても、あなたの次の人にとっても、いちばん良くない結末です。

起こした直後から数日の流れ

気が動転していると、何をどの順で処理すればいいか分からなくなります。一般的な流れを整理しておきます。ただし勤務先に規定やマニュアルがある場合は、必ずそちらが優先です。

タイミングやること
気づいた直後患者さんの安全確認(服用の有無・健康被害の可能性)。同時に、その場にいる薬剤師・管理薬剤師へ即時に共有する
数十分以内上長の指示のもとで、患者さんへの連絡・回収・処方元への連絡などの方針を決める。個人判断で先走らない
当日中事実関係をメモに残す(時刻・経緯・気づいたきっかけ・その日の体制)。記憶は驚くほど早く薄れる
当日〜数日勤務先の様式に沿ってインシデント報告書を作成。事実と推測を分け、環境要因も書く
数日〜店舗・会社としての再発防止策の検討に参加する。「二度と起こさない」ではなく「どうすれば構造的に起きにくくなるか」で考える
並行して自分のメンタルの様子を見る。眠れない・食べられない状態が続くなら、我慢せず相談先を確保する

賠償や法的責任の話が気になる方もいると思いますが、ここはこの記事で断定できない領域です。薬剤師賠償責任保険も、個人加入か勤務先の団体保険かなど状況はさまざまで、適用の範囲や条件は加入内容によって異なります。まずは勤務先に、保険の加入状況と今回のケースの取り扱いを確認するのが最初の一歩です。個別の法的な判断が必要な場面では、弁護士など専門家に相談してください。ネット上の断片的な情報で自分のケースを判断しないことをおすすめします。

自分を責め続けてしまう、その気持ちについて

過誤を起こしたあと、「自分は薬剤師に向いていない」「あの患者さんの顔が浮かんで眠れない」という状態になる方は多いです。その反応自体は、異常でも弱さでもありません。人の体に入るものを扱う仕事をしていて、そこでミスをして、平気でいられる方がむしろ心配です。

「反省」と「自罰」は、まったく別のもの

ここを分けて考えられるかどうかが、その後を大きく左右します。この2つは似ているようで、向いている方向が正反対です。

反省(前を向く作業)自罰(回り続ける作業)
問いの形「どういう条件が揃うと、これは起きるのか」「なぜ自分はこんな人間なのか」
出てくる答え手順・体制・確認方法の具体案答えが出ない(出ないので反復する)
次への効果同じ過誤が起きにくくなる具体的な対策が出てこないまま、消耗だけが続きやすい

反省は、次に活きます。何が起きたかを整理し、どこに穴があったかを見つけ、次から動きを変える。これは前に進む作業です。

一方で自罰のほうは、いくら続けても答えが出ません。「自分はダメだ」を何百回繰り返しても、そこからは具体的な対策が一つも出てきません。出ないからこそ、また最初から繰り返してしまう。そういう性質のものです。

ここで大事なのは、「今すぐ自責をやめなさい」と言いたいわけではないということです。やめられないから苦しいのであって、やめられない自分をさらに責める材料にしてほしくありません。動揺すること自体は自然な反応で、それは変わりません。ただ、その状態がずっと続いてしまうときに、「これは反省ではなく自罰の側に入っているな」と気づけるだけで、少し楽になることがあります。気づいたら、その分のエネルギーを、次に同じことが起きない仕組みを考える方へ、少しずつでいいので移してみてください。

一人で抱えると、記憶は必ず悪い方に育つ

過誤の記憶は、一人で反芻しているうちに、実際より大きく・重く育っていきます。誰かに口に出して話すと、「思っていたより輪郭がはっきりした」という感覚を持てることが多いです。まず話しやすいのは、事情を共有している上長や同僚、あるいは社内の相談窓口・産業医です。

なお、事案そのものを社外の人に話してよいかどうかは、勤務先の就業規則や守秘義務の定めによって変わります。判断に迷う場合は勤務先に確認してください。少なくとも「今こういう精神状態でつらい」という自分の状態については、事案の詳細に触れなくても相談できます。

また、眠れない・食欲がない・出勤前に動悸がするといった状態が続くようなら、期間の長さにかかわらず、医療機関に相談する選択肢を持っておいてください。薬剤師は自分の体調を後回しにしがちですが、専門家に頼るのは弱さではありません。つらいと感じた時点で相談して構いません。

過誤は、本当にあなただけの問題だったのか

一般論医療安全の分野では、事故は個人の不注意だけで起きるのではなく、複数の要因が重なったときに起きるという考え方が一般的です。それを前提に、自分の職場の状況を一度冷静に見てみてください。

いくつも当てはまるなら、今回のことは「あなたが起こした」というより、「あなたのところで起きた」に近いのかもしれません。だから責任がゼロだと言いたいわけではありません。ただ、原因を100%自分の内側に置いてしまうと、事実を見誤りますし、何より立ち直れません。

特に、複数店舗を掛け持ちしている方や、応援で慣れない店舗に入ることが多い方は、環境要因のリスクが上がりやすいと言われています(複数店舗の掛け持ちが抱えるリスク)。有給が取れず疲労が抜けないまま働き続けている場合も同じで、有給が取れない職場の考え方が参考になるかもしれません。

「もう辞めたい」と思っているあなたへ

過誤のあと、「この仕事を続ける自信がない」「明日から店舗に行きたくない」と思うのは、不自然なことではありません。ただ、この記事では「つらいなら転職しましょう」とは言いません。順番があると思っているからです。

まず、直後の1〜2週間は大きな決断をしない

過誤の直後は、判断力がいちばん落ちている時期です。この状態で退職を決めると、あとで「あのとき決めなければよかった」となる可能性があります。気持ちが落ち着いてくると、同じ出来事でも見え方が変わることがよくあります。辞表を出すのは、いつでもできます。まずは、患者さんへの対応と報告書を終えて、少し息をつけるところまで進めてください。

そのうえで、「自分の問題」と「環境の問題」を分ける

落ち着いてきたら、切り分けをします。判断の軸として、一般的な整理を挙げておきます。

状況考え方の一例
報告後、組織として原因究明と再発防止が動いた職場の医療安全は機能している。今は自分の回復を優先し、環境を変える判断は急がなくてよいことが多い
環境要因(人員・体制)に心当たりがあり、会社もそれを認識して改善に動いている改善の実行と速度を見て判断する。改善が進むなら残る選択肢は十分ある
環境要因を伝えても「気をつけろ」で終わり、体制は変わらない同じ構造が残る以上、次も起こり得る。中長期的に環境を変える検討を始めてよい段階
報告に対して叱責や人格否定が返ってきて、報告しづらい空気がある安全文化として危うい状態。自分を守るためにも、選択肢を広げておく意味がある
過誤のあと、心身の不調が長く続いているまず休養・受診を優先。キャリアの判断はそのあとで十分間に合う

おすすめしたいのは、「同じ構造が続く職場かどうかを見極めてから決める」という順序です。過誤の直後は、どうしても自分の失敗として全部を受け止めてしまいがちで、そのまま辞めると「環境の問題だったのか、自分の問題だったのか」が分からないまま次に進むことになります。一方、構造の問題だと見極めたうえでの転職なら、次の職場を選ぶ基準も明確になります。辞めたいと思うこと自体は、逃げでも甘えでもありません。順番の話をしているだけです。

環境を変えると決めたなら、「安全体制」を見る目で選ぶ

環境を変える判断に至った場合、次に選ぶときの基準は給与や通勤時間だけではありません。人員体制、監査の運用、ヒヤリハットへの向き合い方といった安全に関わる部分を面接や見学で確認しておくと、同じ思いを繰り返しにくくなります。見るべきポイントは良い薬局の見分け方に整理してあります。

また、辞めたい気持ちの整理そのものについては薬剤師が「辞めたい」と思ったときの考え方、調剤薬局特有のしんどさ全般は調剤薬局を辞めたくなる理由にまとめています。1年目・2年目で今回のことが起きた方は、新人薬剤師がつらいと感じるときも読んでみてください。同じことで悩んでいる人は、あなたが思っているよりずっと多いです。

管理する側になって、見え方が変わったこと

実体験最後に、報告を受ける立場になってから感じるようになったことを一つだけ。

現場にいたころ、私にとって過誤は「絶対に起こしてはいけないもの」であり、起きたときは「起こした人の問題」に見えていました。ところが、複数の店舗を見る立場になると景色が変わります。同じような場面で、同じような詰まり方が、店舗をまたいで起きていることに気づくからです。そうなると、「またこの店で起きた」ではなく「この条件が揃うと、誰がいても起きるのでは」という発想に変わっていきます。管理する側が構造を見に行くのは、性格が優しいからではなく、個人を責めても再発率が下がらないという単純な事実に、何度もぶつかるからです(管理職側の視点は管理薬剤師・管理職としてのキャリアでも書いています)。

だから、いま自分を責めているあなたに伝えたいのはこういうことです。あなたが今日感じている痛みは、あなた個人の欠陥の証明ではなく、その場に穴が空いていたことのサインかもしれない。もし今の職場がその穴を一緒に塞いでくれないなら、それはあなたの問題ではなく、その職場の問題です。どちらであっても、あなたが一人で背負い込む理由にはなりません。

よくある質問

Q. 患者さんに実害が出ていない場合でも、報告は必要ですか?

A. 一般的には、実害がなかったケース(ヒヤリハット・インシデント)こそ報告する意味が大きいとされています。実害が出る前に構造の穴が分かるからです。勤務先の報告基準に沿うのが大前提ですが、「実害がないから黙っておく」という判断はおすすめできません。

Q. 報告したら、人事評価や昇進に響きますか?

A. 運用は勤務先によるため断定はできません。ただ医療安全の考え方としては、報告そのものを不利に扱うと報告が上がらなくなるため、報告を評価上のマイナスにしない運用が望ましいとされています。逆に「隠していたことが後から発覚した」ケースの方が、信頼という意味で重く受け止められやすい傾向があります。

Q. 患者さんに自分から直接謝りに行きたいのですが。

A. 気持ちは自然なものですが、患者さんへの連絡・説明・謝罪の方法は、勤務先の規定や、医療機関との連携などが関わってきます。個人の判断で動くのではなく、必ず上長・勤務先の指示を仰いでください。組織として動く方が、結果的に患者さんにとっても丁寧な対応になることが多いです。

Q. 賠償責任を個人で負うことになるのでしょうか。

A. これはケースによって大きく異なり、この記事で断定できる内容ではありません。薬剤師賠償責任保険も、個人加入か勤務先の団体保険かによって適用の範囲や条件が変わります。まず勤務先に保険の加入状況と取り扱いを確認し、法的な判断が必要な場面では弁護士など専門家に相談してください。

Q. 過誤のあと、怖くて調剤のスピードが落ちてしまいました。

A. 直後にそうなるのは自然な反応です。ただ、慎重になりすぎて手が止まる状態が長く続くと、それ自体が新たなリスクになり得ます。すべてを完璧にしようとせず、今回穴が空いたポイントに絞って手順を1つ変える、という戻し方が現実的です。不安が強い時期は、上長に状況を伝えて一時的に体制を厚くしてもらう相談をしても構いません。

Q. 職場に相談できる人がいません。

A. その状況自体が、実はかなり重いサインです。過誤への対応そのものは勤務先の指示に従ってください。そのうえで、気持ちの部分については、社内の相談窓口・産業医、あるいは医療機関に頼るという方法があります。社外の知人に相談したい場合は、事案の内容を話してよいかどうかが勤務先の守秘義務の定めによって変わるため、事案の詳細には触れず「今こういう精神状態でつらい」という自分の状態を話す形にとどめるのが安全です。相談相手が一人もいない環境が続くなら、中長期的には環境を変える検討材料になります。

まとめ

今夜、眠れずにこれを読んでいるなら。明日やることは、たぶんあなたが思っているより少ないです。患者さんの状況を確認して、上長に事実を伝えて、覚えていることを書き留める。それだけで、今日のところは十分です。

この出来事をここまで重く受け止めているということは、あなたがこの仕事に真剣に向き合ってきたということだと思います。どうか、自分を裁くのはこのあたりでやめて、次に同じことが起きない仕組みを考える方に、力を回してください。

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※本記事は、調剤薬局業界で一般的に知られている医療安全の考え方や、複数店舗を管轄する管理職として報告を受ける立場から見た一般的な傾向をもとに整理したものです。運営者本人が起こした特定の調剤過誤の事例に基づくものではなく、記事中の内容はいずれも個別の事例を特定するものではありません。過誤発生時の対応手順・患者さんへの説明・報告の基準は勤務先の規定によって異なるため、必ず勤務先の指示に従ってください。賠償責任・法的責任・薬剤師賠償責任保険の適用範囲については、加入内容や個別の事情により異なり、本記事は法的な判断を示すものではありません。実際のケースについては、勤務先および弁護士など専門家にご確認ください。心身の不調が続く場合は、早めに医療機関にご相談ください。