こんにちは、「転職案内人」です。現役の薬剤師として働きながら、5店舗を管轄する係長をしています。薬剤師歴は12年、自分自身も2年前に転職活動を経験しました(最終的には現職に踏みとどまっています)。
この記事のテーマについても、立場を先にお伝えします。私はいま、かかりつけ薬剤師として患者さんから同意をいただき、継続して服薬指導をしている当事者です。研修認定薬剤師も保有しています。そして同時に、係長として中途採用の書類に目を通し、面接に入る側でもあります。
この記事では、制度の解説はしません。かかりつけ薬剤師の基本——患者さんの同意のもとで担当の薬剤師が決まり、その人の薬を継続して一元的に見ていく仕組み——は、読者のみなさんならすでにご存じのはずだからです。ここで書くのは、制度解説のサイトには載っていない2つのことです。「現場では同意をどう取っているのか」、そして「転職市場でかかりつけの経験はどう評価されるのか」。同意を取る側と、応募者の履歴書を見る側、両方をやっている人間として書いていきます。
かかりつけ薬剤師の同意、現場ではどう取っているか
「かかりつけを増やせ」と会社から言われるものの、投薬カウンターでいきなり切り出すのは気が引ける。頑張って説明しても断られてしまう。——同意の獲得は、多くの薬剤師が最初につまずくところだと思います。
私が実際に声をかけているのは、主に2つのパターンです。
①昔から定期で来てくれている患者さん
一つ目は、長く定期で来てくださっている患者さんです。何年も顔を合わせて、薬のことも生活のことも会話が積み重なっている方であれば、かかりつけの話は「新しい契約のお願い」ではなく「いまの関係を続けるための手続き」として切り出せます。すでに事実上のかかりつけになっている関係を、同意という形にするだけ。この順番なら、患者さんにとっても不自然さがありません。
逆に言うと、関係ができていない患者さんにいきなり制度の説明から入っても、うまくいきにくいのが正直なところです。同意は「取りに行く」ものというより、積み上がった関係に「形を与える」ものだと考えたほうが、現場の実感に合っています。
②残薬を調節した患者さん——「役に立った直後」が一番のタイミング
二つ目は、残薬を調節した患者さんです。ご自宅に溜まっていた薬を確認して、処方医に連絡して日数を調整する。この対応をした直後は、患者さんが「薬剤師に相談してよかった」と実感してくださっているタイミングです。
ここで「これからも私が続けてお薬を見させていただけませんか」とお伝えすると、すっと受け入れていただけることが多い。薬剤師が役に立ったことを実感してもらえた直後は、かかりつけの提案が「営業」ではなく「続きの提案」として届くからです。同意の獲得はトークの上手さよりタイミングだ、というのが私の実感です。残薬に気づいたら、調節して終わりにせず、そこを同意の入口にする。この意識があるだけで、声のかけやすさは大きく変わります。
同意獲得を個人の頑張りにしない——初回アンケートの仕組み化
もうひとつ、店舗を管理する側としてやっている工夫があります。初回アンケートに「今後も同じ薬剤師の対応を希望しますか」というチェック項目を入れておくことです。
ここにチェックを付けてくださった患者さんは、そもそも「同じ人に見てほしい」という希望を自分から表明してくれています。だから薬剤師の側は、ゼロから説得するのではなく、「ご希望いただいていたので」と自然に切り出せる。声をかける心理的なハードルが大きく下がりますし、話し上手なスタッフに頼らなくても、店舗の誰もが同意につなげられるようになります。
同意の獲得を個人の営業トークに任せると、取れる人と取れない人の差がつくだけです。仕組みで入口を作っておくのが、管理側の仕事だと思っています。
かかりつけになった後のリアル——業務の偏りと投薬時間の問題
同意をいただいた後の話も、正直に書いておきます。
かかりつけになると、その患者さんには毎回同じ薬剤師が対応することになります。これは制度の趣旨そのものなのですが、現場では2つの問題として表れます。特定の薬剤師に業務が偏ることと、投薬時間が長くなることです。
かかりつけの患者さんが多い薬剤師は、その方たちが来局するたびに投薬に入ることになります。継続して見ているからこそ話すことも確認することも増えて、一件あたりの投薬時間は自然と長くなる。その間、調剤や監査など他の業務はその人の手を離れますから、負荷は誰かに寄っていきます。かかりつけを頑張っている人ほど忙しくなる、という構図です。
これは本人の要領の問題ではなく、「同じ薬剤師が継続して対応する」という制度の性質からくる構造的な課題です。シフトを組んで店舗を回す側から見ても、かかりつけの多い薬剤師の時間をどう確保するかは、はっきり言って悩ましいポイントです。「かかりつけを増やせ」と言われながら、増えたら増えたで現場が回りにくくなる。この板挟みに悩んでいる方は、あなたの店舗だけの話ではありません。
だからこそ、前の章で書いた「仕組み化」が効いてきます。同意の入口をアンケートで広げて特定の個人に依存しない形にしておくことは、獲得のためだけでなく、負荷の偏りをならすためにも意味があるのです。
転職市場で「かかりつけ経験」はどう評価されるか——採用する側の本音
ここからが、この記事でいちばん伝えたいところです。書類や面接で応募者を見る側として、かかりつけの経験がどう評価されているかをお話しします。
面接で「同意件数」は、こちらからは聞かない
まず意外に思われるかもしれませんが、私は面接で「かかりつけの同意を何件取りましたか」とこちらから聞くことはありません。聞くのは、応募者本人が自分のアピールとしてかかりつけの話をしてきたときです。そこで初めて、「どうやって同意をいただいたんですか」「どんな患者さんを担当していましたか」と詳しく掘り下げます。
つまり、かかりつけの経験は「聞かれるのを待つ」ものではなく、「自分から出して初めて評価の土俵に乗る」ものだということです。黙っていれば、その経験は面接の場に存在しないのと同じになってしまいます。
履歴書の時点で見ているのは「認定薬剤師の有無」
では、こちらが自分から確認しにいくのは何か。履歴書に認定薬剤師の記載があるかどうかです。これは書類に目を通す時点で必ず見ます。
理由は単純で、採用側の頭の中はこういう思考回路になっているからです。認定薬剤師を持っている人は、かかりつけ薬剤師を担うための前提のひとつを満たしている。ということは、入社後にかかりつけとして患者さんを持ち、店舗の算定に貢献してくれる可能性が高い——。
お気づきでしょうか。採用側は、資格そのものに感心しているわけではないのです。見ているのは「この人は入社後、うちの店舗の算定に貢献できるか」。認定薬剤師の記載は、その見込みを書類の段階で判断できる、数少ない客観的な材料なのです。研修認定を「持っているだけで使い道がない」と感じている方がいたら、それは違います。転職市場では、履歴書に書かれたその一行が最初のスクリーニングを通る力を持っています。
求職者への実践アドバイス
以上を踏まえて、転職を考えている方への具体的なアドバイスをまとめます。
1. 認定薬剤師は、履歴書に必ず書く。 前の章のとおり、採用側は書類の時点でここを見ています。取得している方は資格欄に忘れず記載してください。書き方を含めた履歴書全体の作り込みは薬剤師の履歴書ガイドで整理しています。更新が近い方は、転職活動の前に切らさないようにすることも忘れずに。
2. かかりつけの経験は、聞かれるのを待たず自分から語る。 採用側からは聞きません。職務経歴書と面接で、自分から出してください。そのとき効くのは件数の自慢ではなく、「どうやって同意をいただいたか」の中身です。「残薬調節をきっかけに声をかけていた」「初回アンケートに希望欄を作って、店舗として同意につなげる仕組みを作った」——このレベルの話ができる人は、一人の薬剤師としてだけでなく、店舗を任せられる管理側の候補としても評価されます。実際、仕組みを作る発想があるかどうかは、管理薬剤師への適性を見るうえで大きな判断材料です。面接での伝え方の基本は薬剤師の転職面接ガイドにまとめています。
3. 経験の「中身」が評価される領域は、かかりつけだけではない。 同じように現場の一次情報が武器になる領域として在宅医療があります。かかりつけと在宅は「患者さんを継続して見る」という点で地続きの経験なので、両方に触れているなら合わせてアピール材料になります。詳しくは在宅医療で働く薬剤師のリアルをどうぞ。
4. 転職サービスには、経験を「翻訳」してもらう。 かかりつけの経験や同意獲得の工夫は、職務経歴書への落とし込み方ひとつで伝わり方が変わります。エージェントを使うなら、この記事で書いたような「採用側が見ているポイント」を踏まえて書類を一緒に磨いてくれるかどうかが選ぶ基準になります。どのサービスをどう組み合わせるかは薬剤師転職サイトの比較・選び方で目的別に整理しているので、参考にしてください。
まとめ
要点を整理します。
- 同意を取りやすいのは「昔から定期で来てくれている患者さん」と「残薬を調節した直後の患者さん」。トークの上手さよりタイミング
- 初回アンケートに「同じ薬剤師の対応を希望しますか」の項目を入れると、同意獲得を個人の営業に頼らず仕組み化できる
- かかりつけが増えると、業務の偏りと投薬時間の長さが現場の課題になる。これは構造的な問題で、本人の要領のせいではない
- 採用側は面接で同意件数を聞かない。本人がアピールしてきたら初めて詳しく聞く——だから自分から語ること
- 履歴書の時点で見ているのは認定薬剤師の有無。「入社後に算定へ貢献できるか」の見込みとして評価している
- 同意獲得の工夫を仕組みとして語れる人は、管理側の候補としても評価される
かかりつけ薬剤師は、負担も含めて引き受ける働き方です。ただ、そこで積んだ経験——同意のいただき方、患者さんとの関係の作り方、店舗としての仕組み作り——は、転職市場で確かに評価される資産になります。せっかくの経験を「聞かれなかったから言わなかった」で終わらせないでください。この記事が、その伝え方を考えるきっかけになればうれしいです。
次の一歩のために(あわせて読みたい)
- 履歴書に認定薬剤師をどう書くか → 薬剤師の職務経歴書・履歴書の書き方
- 経験の伝え方 → 薬剤師の転職面接でよく聞かれる質問と答え方
- どのサービスを選ぶか迷ったら → 薬剤師転職サイトの選び方(目的別比較)
- 大手サービスの実際 → ファルマスタッフの評判/ファーマキャリアの評判
- 同じ「現場のリアル」シリーズ → 在宅医療で働く薬剤師のリアル
- 管理側のキャリアを考えるなら → 管理薬剤師の打診を受けたら
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